WHO、今冬の鳥インフルエンザ感染拡大を警告(日経)

本編ではBSEに関する毎日の記事について触れたが、こちらではインフルエンザの現状を軽く触れておく。

 上海市で13日から始まったWHO西太平洋地域委員会の年次総会で演説した李鐘郁WHO事務局長も「鳥インフルエンザがアジアの一部地域で家禽類の風土病となり、根絶できないかもしれないと懸念している」と表明。人間への大流行を防ぐため、強化すべき課題として(1)動物への感染例発見(2)人間への感染の監視(3)ワクチン開発(4)ウイルス進化をめぐる研究―を挙げた。

牛は食わなきゃ済むんだが、インフルエンザは容赦ない。特にH5N1は質が悪い。


本編でも引用させて頂いたMassie池田氏のインフルエンザに関する記事、新型インフルエンザへの備えより。

この冬はまた鶏肉を巡って大騒ぎになるばかりでなく,新型インフルエンザの出現も確実となった.今度の冬が危ない.SARSという後門の狼がしっかり生きている上に,いよいよ前門の虎がお出ましというわけだ.虎年まではとても待ってはくれないだろう.牛ごときで騒いでいる場合じゃないんだが.

ホントに。更にこのトリインフルエンザ、虎ならぬ猫も媒介する可能性が示される*1始末。

この手の感染症の社会に与えるダメージはでかいんだが。

John McConnell. News: Ready for the next influenza pandemic? Lancet 2002;359:1133*2

Is the global health community prepared for the next infuenza pandemic? The answer is a clear no.

新型インフルエンザの出現間隔の平均値は25年だが,前回の1968年の香港カゼ以来,34年がたっている.間隔が開くほど,免疫を持っている人が少なくなるから,それだけ被害が大きくなる.

上記の記事では,もし,新型インフルエンザの流行が起これば,全人口の2割から3割が感染し,全人口の6%が肺炎を併発し,全人口の1%が入院を必要とし(日本では120万人),全人口の0.6%(日本では72万人)が死亡するとしている.

PubMedへのリンクのみ追加。戦争の比ではありません。AIDS等と異なり原則平等、というか無差別。

一方,過去の香港カゼの経験から言って,ワクチンを製造し,接種可能になるまで,半年かかる.そのワクチンさえも,製造能力があるのは先進9カ国に過ぎない.一朝事有れば,これらの国々は,自分の国を最優先し,他国にはワクチンを回さないだろう.ワクチン供給に関する国際的な取り決めは何もない.抗ウイルス薬にしても似たり寄ったりの事情である.

真剣に備えておくべきだと思うが。


ヒト-ヒトの感染性が何時か獲得されると考えると、暗鬱な気持ちになる。
願わくばそれまでに病原性が緩和されることを。